映画「予告犯」感想

1ヶ月前に観たにも関わらず、色々と自分の中で咀嚼する部分があって、どう感想をまとめようかずーっと迷ってました。
が、いい加減書かないと記憶がだんだん曖昧になってきちゃうと思ったので、とにかく思ったままに書いていこうと思います。


感想本編に入る前に、「ラブライブ」って人気凄いのね。(唐突)
いや、私もゲームやってるので一応ラブライバーなのですが。
てれび戦士飯田里穂ちゃんが声優さんを務めていると知ったのがきっかけで「ラブライブ」の世界に片足突っ込んでみたんだけど、歌や声優さんたちのパフォーマンスが良くて、キャラクターも可愛いし、世界観も共感できるし、個人的にも好きなんですよ。
ただ、「予告犯」のために映画館に行った日が「ラブライブ」公開されてすぐの頃で、世間の「ラブライブ人気」を目の当たりにしました。
映画館に高校生が多い!
グッズめっちゃ出てる上に半分以上が品切れ中!
ひえ〜〜〜〜!!
独身の頃の私なら、迷わず「予告犯」→「ラブライブ」のはしごコースに変更したけど、お金も時間もそんなにないので断念。
ついでにラブライブポップコーンも欲しかったけど、さすがにあれを持って「予告犯」のシアターに入る勇気は無かった。。。
あ、でも、高校生らしきお客さんたちの中に、「予告犯」のシアターへと入っていってくれた子も結構いて、嬉しかったなぁ。
しかも「土竜の唄」の時みたいに男の子が入ってくれてたのが尚更嬉しかった。


私が行った映画館だけなのかは分からないですが、「予告犯」のシアター入り口に「グラスホッパー」のポスターが置いてありました!
フライヤーに出てた鈴木先生(斗真の役を勝手にこう呼んでる)が雑踏を歩いてる写真ではなくて、雑踏を上から撮った写真のポスター。
まだ波瑠さんとか追加キャストさん発表前で主役3人の名前しかなかったから、暫定版のポスターだったのだと思う。
これだけでもテンション上がったのに、上映前の予告編でも「グラスホッパー」が!
グラスホッパー」公式サイトにアップされてた、最後にちょこっと鈴木先生が何かに追われてる姿が映された予告編でしたが、もうそれだけで本編前からテンションアップ!
グラスホッパー」も松竹だったんですね。
松竹さん、今年1年お世話になります。



という訳で、前置き長くなりましたが、本編感想へ。
思いきりネタバレで書いております。





☆☆☆☆☆☆☆





私、「予告犯」は自分の直感で原作を読まずに拝見しました。
テレビCMなどで「泣ける」と煽られると泣けないというひねくれ者なので(爆)、泣かなかったけれど、斗真が言ってた「入り口こっちだったのに出口こっち!?」の意味は凄く分かりました。


意外だったところをつらつらと。
もっとシンブンシの予告が中心的にフィーチャーされて話が進むのかなと思っていたのだけど、シンブンシのメンバーのキャラクターを中心に置いてたのがまず意外。
シンブンシのメンバーたちは、やってることはなかなか過激なのに、実はやってる最中も案外挙動不審(弁護士の振りだとか、トラック止めるところとか)という人間っぽさのギャップが良かった。
「社会生活では上手くいかなかったけど犯罪なら上手く生きられた」感じなのかと思いきや、案外そうでもなくて(いや、それでも人殺してるのであれだけど)、意外と不器用にやってて安心したところがあります。
ついでに、吉野さんもキャラクターとしてもっと深いところまで知りたかった。
彼女はシンブンシメンバーや窪田くん演じたネットカフェの店員さんに「頑張れるだけ幸せ」と言われていたけれど、彼女も理不尽な目に遇いながら何故頑張れたのか。
ゲイツの長い追跡劇から分かるように、吉野は「やる」と決めたことに対してとにかくどこまでも突き進めるだけのバイタリティーを持っていたからこそ、田中圭くん演じた公安にいる同級生から「友達いなかったよな」と言われようが自分の信念を貫けたのだろうけれど。
もしかするとドラマ版で描かれた部分があったのかもしれないけど、なんせWOWOW見られないんで、知りたかったなぁ。
もう1つ意外だったのは、ゲイツの目的と最期の迎え方かな。
ヒョロが重要な人物だというのは「VS嵐」などでも言われていたので、シンブンシになるきっかけにヒョロが大きく関わっていることは察しがついてたけど、シンブンシの活動自体が「ヒョロのお父さんを捜すため」だったとは。
ヒョロのお父さんを捜すためには、「人捜しでここに勝るところは無い」という風に劇中で言われていた「公安」を動かすのが一番良い。
「公安」を動かすには、国政に関わる政治家を巻き込むのが良い。
政治家を巻き込んで「公安」が動くくらいの騒ぎにするには、まず世間的に騒ぎを大きくするのが良い。
世間的に騒ぎを大きくするために、インパクトが必要だから、シンブンシを被ってネット中継で予告や処刑をするのが良い……という、理系人間・ゲイツの逆説的発想からの犯行だった。
ターゲットをどうやって実際に見つけてたのかとか細かいところに突っ込みたくなるけど、まあそれは映画だから。(無理矢理)
あと、最期の迎え方なんだけど、浜辺のシーンで「あ、もしかしてノビタは生かす方向性なのかな?」という気はしていたんです。
でも、まさかゲイツ以外全員を生かすとは。
しかも、自分だけが死ぬことで、残された動画から「ゲイツが全てを仕組み、カンサイたちを脅して無理矢理巻き込んでいた黒幕」という設定にまで仕立てあげたことに驚き。
そこまで計算してたのか。
最後の最後に、あの脅し動画も実はメタボの誕生日祝いサプライズの一環だったと分かって見る側を安堵させたわけだけれども。
最期に吉野さんが来てくれることまでしっかり計算済みで、ヒョロと他のシンブンシメンバーのことを託すあたりがねぇ……。
シンブンシメンバーも、それを察して事情聴取でも最後までゲイツの計画を貫いてたのが切なかった。
メタボがゲイツのことをけちょんけちょんに言いながら泣いてたシーンは凄く良かったです。


ゲイツは、あんなに最期まで計算して先を読む力があったのに、何故生きる方向性でそれが生かされなかったのか、本当に悔やまれる。
彼も別に頑張れない人では無かったのにねぇ。
派遣から正社員になるべく働いていたし。
(そう言えば、「遅咲きのヒマワリ」でも正社員目前で派遣切られてたよね)
滝藤さん演じる社長や会社の雰囲気が良くなかったのもあるし(大人がLINE使って陰口叩くって。しかもターゲット次々に変えて仕事から外していくって。どんないじめやねん)、ゲイツも「分からないことが聞けない」という弱点はあったわけだけれども。
なんかね、ここがすごくモヤモヤしたところで。
私も「分からないことが聞けない」性格で、実際それでアルバイトで失敗したことがあって、職場にも馴染めなかったし。
今ならそれが良くないって分かるから、意識して聞くようにしなきゃと思えたり、失敗した時も「あの段階でちゃんと確認しなきゃいけなかった」って振り返ったりすることができるんだよね。
ゲイツは親に頼れなかった過去があるから、きっと何でも「自分でやっていかなきゃ」って思いが強かったはず。
だからこそその弱点が生まれてきてしまったのだと思うんだけど、そう思いながら生きてきたものを変えるって案外難しいことなんだよね。
私も学生の時に周りから「アイツ何でも親にチクる」みたいに陰で言われてるのを知って、「あ、私すぐ親に頼ってるって勘違いされる人間なんだ」と思って、親とかにとにかく頼らないようにしなきゃと思ってた。
実際は親が忙しいし妹が自己主張が強いタイプで親と衝突することが多かったから、自分から親に自己主張するのは元々あんまりしてなかったし、チクってもいなかったんだけど。
それで大人になってから、アルバイトの失敗とかで「あ、人に頼らないのって本当はいけないんだ」って初めて気づけて。
でも、ずっと「頼らないように」って思って生きてきた考えを変えることが難しくて、社会人になってからも分からないことを聞いたりするのが苦手で、結局またいろんな失敗をして……という感じだった。
ゲイツが失敗を指摘された時に「すぐに教えてもらえれば……」と言って、受け身な姿勢をさらけ出してしまったけれど、「分からないことが聞けない」私もそんな感じで、「自分で気づいて聞きにいけ!」みたいなのは本当に苦手なんです。
「自分でまずは何とかやらなくちゃいけないんだ。自分から頼ったら迷惑になるかもしれないから」 って思っちゃうから。
ゲイツの場合は派遣という立場もあっただろうし、あの険悪な職場で張り切って働くというところが「空気読めねえなコイツ」って感じでターゲットにされてしまったところもあったのかもしれないけど。
何かねぇ……ゲイツは自分を客観的に見てるみたいで辛かった。
でも、100%ゲイツが悪いのか?私もゲイツみたいに受け身だからゲイツを正当化しようとしてしまうのか?という葛藤が未だにあります。


何か自分の話に行っちゃったけど、そんなゲイツにとっての「人に恵まれた職場」が劣悪な環境のごみ捨て場の仕事だったというのがね……。
雇い主のじいちゃんは酷かったけど、「友達が欲しい」と願っていたゲイツが「友達を得る」夢を叶えられた職場。
ゲイツのことが尊重され、「一緒に働く仲間がいる」という実感が持てた環境。
みんな何かしらの理由で世間一般の仕事には就けなかったという背景があるからこその結束もあったのだろうと思うけど。
なんか、この人たちってそんなに「世間一般の仕事には就けない」のだろうかって思っちゃった。
可愛がってたヒョロが死んでしまい、そんなヒョロのことを蔑ろにしたじいさんをみんなで殺してしまい、そこからゲイツが「ヒョロの夢を叶えるために」動き出すわけだけど、もっともっと、ゲイツが「動き出せる」場所やタイミングは無かったのだろうか。
いやでも、「友達になる」夢を叶えてくれた仲間だったからこそ動き出せたわけで。
同じ背景を持っていなかったら、同じ職場でもこんなに仲良くなったかは分からない。
皮肉だけど、ゲイツの求めていたものは世間的には良好な場所ではなく劣悪な場所でしか見つからなかった。
ゲイツの夢は、この社会ではそんなに難しいことなのかな?
そして、ゲイツは「ヒョロの夢を叶える」目的を遂行する中で、他のシンブンシメンバーの夢も叶えようとする。
「でっかいことをやってやりたい」カンサイに、「シンブンシ」という世間を騒がす存在に変身する場を設け、「彼女が欲しい」ノビタには気になる女の子がいるお店で待ち合わせしたり、自首を止めたり(何故なら最後は全てゲイツが罪を被るから、ノビタをなるべく軽い刑で済ませて彼女のところにまた行けるように)、最後の浜辺ではノビタが女の子から借りた傘を大事に持っているのを見て(多分傘も彼女のことも)「大事にしろよ」と言う。
メタボには回らない寿司を誕生日にプレゼント……ただし、回らない寿司は本当はカウンターの寿司屋のことなんだけど、勘違いしてスーパーのパック寿司(^_^;)
ゲイツが勘違いしてると分かっても温かいシンブンシのメンバーたち、そんなメンバーたちのやり取りを温かく見守るゲイツ
もう1回言うけど、これって劣悪な環境下でしかできなかったことなのだろうか。
世間的に良好な環境の中ではできなかったのだろうか。


吉野さんは劣悪な環境下から世間的に良好と言われる環境に這い上がってきたわけだけど、前にも書いたけど、それは彼女がゲイツの追跡劇に見られるように「とにかく周りにどう思われようと突き進むことができた人」だったのがきっと大きい。
ゲイツはきっとそんな吉野さんの突き進む力に驚いたし、シンブンシの計画を進める上で脅威に感じたし、この人みたいにはなれないと思っただろうし、でもそれでも憧れただろうし、「この人なら僕の目的を伝えてもいい」という信頼感があったのだろうね。
あと、吉野さんは最初の方のカフェでシンブンシの被害に遭った大学生に対して物言うシーンがとっても好きなんだけど、観てる時は「その被害に遭っといて何故話を聞く場をカフェみたいな周りに聴こえる場所にしたんだ!」って心の中でツッコミ入れてた。
でも、考えてみたら、吉野さんなりの大学生に対する制裁だったのだろうと。
性的被害に遭った女の子をバカにした大学生に、女の人が多いカフェで自分がシンブンシにされた屈辱的な行為を話させる、でも話せなくて代わりに吉野さんが言うことで「何で警察まで自分をかばってくれないんだ…」と思わせたところに「のこのこついていくのが悪い」と大学生が女の子たちに向けて書いたのと同じ言葉を返す。
シンブンシとは違う形での制裁。
多分シンブンシの制裁よりもよっぽど効果てきめん。
吉野さんにはそういう理不尽な目に遭った人に寄り添えるところがあって、更にそこに人並み越えた粘り強さがあったから、彼女は這い上がれたのかなと。
吉野さんは親が給食費が払えないくらい困窮していたことから理不尽にいじめられていたわけだけど、吉野さんが専門とするネットの世界も理不尽なことがあらわになりやすい世界なわけで。
吉野さんだからこそ熱心に突き進める環境だったのかもしれない。
吉野さんはそういうものを見つけられたというのも凄く大きいのかもしれない。


まとまりのない感じになったな……案の定。
あとは役者さんたちについて。
恵梨香ちゃんは意志の強い刑事役にピッタリだなと。
あとは、最後にゲイツの本当の目的を知って抱きしめるシーンが凄く印象的でした。
吉野さんがゲイツの本当の目的に驚き、「なんでそんなことで大事を起こして死ななきゃいけないんだ」って怒り、でも「自分の正義を振りかざしたい人ではなくて、誰かを優しく思える人だったんだ」って安堵し……という複雑な感情があのシーンには凝縮されてたのかなと思います。
今回の映画宣伝中に恵梨香ちゃんが斗真とプライベートでも友達だということが判明したので、これからも仲良くしてほしいし、また共演してほしいなと思いました。
シンブンシメンバーも凄くハマってた。
亮平くんのカンサイの明るさは作品の大事なアクセントだったし、良々さんのメタボはゆるいキャラと衝動的にじいさんを殺すあたりのギャップが凄かったし、岳くんは斗真の言う通りで第一声を聞いた時に「ノビタだ!」と思わされました。
本当にこの4人+ヒョロの雰囲気が良かった!!
ヒョロ役の福山康平くん、初めての映画だったのに凄く凄く素晴らしかったです!!
願わくば、「予告犯」の演技でどこかの新人賞を獲らせてあげたいです。
VS嵐」で見た時も爽やかで高校生っぽい勢いがあって素敵な子だなと思ったんだけど、ヒョロには福山くんのそういう良さが凄く詰まっていて、ヒョロがみんなに愛されゲイツを大きく動かす原動力になったのがとても納得できる存在でした。
VS嵐」でも斗真はじめ「予告犯」チームのみんなが福山くんを優しく見守っているのが伝わってきたし、ヒット御礼舞台挨拶でも福山くんから現場で斗真が声をかけてくれた話をしてくれてたし、彼の存在がこの映画の大きな決め手だったと思います。
福山くんがこの映画をきっかけに大きく羽ばたいていきますように。
そして、斗真も6年前は映画界では新人だったのに、そうやって新しく映画の世界に来た役者さんを支えてあげる立場になってきてるんだなと思うと、感慨深かったです。
あとは、菜々緒ちゃんと窪田くんと小松さんの贅沢使いなキャスティングに、斗真をメジャードラマ枠に戻すきっかけを作ってくださった宅間さん、この映画で初めて見た坂口健太郎さん、あとは「軍師官兵衛」に引き続き嫌味なところのある役だった圭くんに、「ウロボロス」とは全然違う印象的だった滝藤さんと、キャストさんの見所が沢山でした。
そして、斗真は、新聞紙を被ってる時の細かな目の動きが秀逸。
更に、本当にこれが一番意外だったんだけど、仲間を見守るゲイツの優しい笑顔が強く印象に残りました。
亮平くんや恵梨香ちゃんが、「プライベートで見せる生田斗真の顔がフィルムに映ってる」と言ってくれていたけれど、ああいう優しい顔ができたのは、ひとえに他のキャストの皆さんのお陰でもあると思うのです。
私もああいう斗真さんの笑顔がフィルムに残ってくれて嬉しい。
あの優しい笑顔、大好きです。